酪農ヘルパー SPECIAL INTERVIEW

酪農ヘルパー SPECIAL INTERVIEW
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学生時代に抱いた「酪農への想い」を貫き、今の自分がある

きちんと“答え”が返ってくる仕事

ちょっとした挫折が、その後の人生を大きく変えるような転機となることもある――。

現在、ヘルパー4年目のS.Y.の場合は、そうした転機が高校入学後に訪れたと言う。

「酪農は高校の産業動物科に入ってから学び始めたのですが、最初は(第二志望の学科だったこともあり)あまり乗り気ではなかったのです。しかし、実習で乳牛に触れるうちに、次第に酪農に惹かれるようになりました」

その理由を、彼女はこう説明する。

「ひと言で言えば、牛には『与えた分、応えてくれる』部分があるからでしょうか。自分が面倒を見た牛が元気になったり、出産したりすると、やはりとてもうれしいものです」

高校時代にそんな感動を覚えたS.Y.は、北海道の大学でよりスケールの大きな酪農実習を体験。そして、卒業後は地元・群馬で酪農の仕事に就きたいという気持ちを固めた。

「ですから、今までの私は自分の信じる道をまっすぐに突き進んできた感じですね」

好きな仕事だからこそ、充実感は大きい

では、実際に酪農の現場で働いてみて、現在はどんな感想を持っているのだろうか。

「朝と夕方の限られた時間の中で慌ただしく多くの仕事をこなさなければならないので、体力的にはけっこうハードです。それに、牛に殴られる(!?)こともたまにあったりして、身体は常に生キズが絶えない状態です(笑)」

ただ、そうした経験を楽しそうに話す(?)彼女の顔からは、「本当に自分の好きな仕事をやっている」という充実感が感じられる。

そんな彼女に今後の目標を聞いてみた。

「今はちょうど3年目を終えたところですが、自分では『やっとお金をいただくに値する仕事ができるようになった』という感じ。ですから、酪農ヘルパーとしての真価が問われるのは、むしろこれからだと思います。まだまだ勉強することは多いですが、やはり農家さんから厚い信頼を寄せられるような存在となりたいですね」

わたしの一日

04:00~05:00
起床
※その日の出役先によって異なる。通勤時間は最も近いところで5分、遠いところで40分ほど
05:00~06:00
出社し、出役する農家での作業開始
※その日の作業は牛舎の清掃から始まる
06:00~07:00
エサやり
06:30~07:30
搾乳
07:00~08:00
ほ乳
08:00~09:00
たい肥の処理など
09:00~10:00
帰宅
10:00~15:00
自由に過ごせるプライベートな時間
16:00~17:00
出社し、出役する農家での午後の作業開始
※基本的な仕事内容は朝と同じ
17:00~18:00
エサやり
18:30~19:30
搾乳
19:00~20:00
ほ乳
20:00~21:00
たい肥の処理などを行い、1日の作業が終了
21:00~22:00
帰宅

「『信頼』、そして『感謝』される仕事」に就くことの意義

精神的なストレスは最初から皆無

酪農ヘルパーにはさまざまな経歴を持った人たちがいるが、N.A.はまったく異なる業界から酪農の世界に入った“転身組”だ。

そのきっかけは、以前にやっていた仕事が「精神的にキツくなったから」だと話すが、酪農の仕事に対する不安はなかったのだろうか。

「まったくなかったですね。それに、ほとんどの人は最初、牛に近づくのが怖いらしいんですけど、私の場合は大丈夫でした。出役先の酪農家さんから『よく平気で近くまで行けるな』と感心されましたから(笑)」

これは、彼の実家がもともと農家をやっており、幼い頃からさまざまな動物が身近にいる環境に慣れていたことが大きかったようだ。「ただ、本格的な肉体労働だったので、最初のうちはやはり身体的には疲れましたね。でも、自分が担当する農家の方はみんな優しかったので、すぐに仕事場の雰囲気には慣れた。その点で精神的には非常に楽でした」

「頼られている」自覚が仕事の喜びに

酪農ヘルパーは(“ヘルパー”とは言っても)単なる酪農家の“手伝い”ではなく、その日の売上を酪農家に代わって稼ぐ、重要な任務を課せられている。そうした責任の重い仕事をするにあたって大切なことは何だろう?

「やはり、酪農家さんとのコミュニケーションが大切だと思います。掃除やエサやり、搾乳といった一連の流れはどこでも一緒ですが、その作業内容は酪農家さんごとに微妙に違うものなのです。ですから十分なコミュニケーションを取って、それぞれのやり方をきちんと把握して作業を行うように心がける。その方が酪農家さんには感謝されるのです」

では、この仕事をしていることの喜びとは?

「私たちが確実な作業をすることで、酪農家さんは休暇を取り、旅行などに出かけることができる。私の場合、このように酪農家さんが安心して休めることが『自分たちは頼られている』という自覚につながり、それが仕事をする喜びにもつながっているのです」

わたしの一日

04:00~05:00
起床
※藤岡吉井地区の16戸の酪農家を担当。通勤時間5~20分ほど。
05:00~06:00
出社し、出役する農家で作業開始
※その日の作業は牛舎の清掃から始まる
06:00~07:00
エサやり
06:30~07:30
搾乳
07:00~08:00
ほ乳
08:00~09:00
たい肥の処理など
09:00~10:00
帰宅
10:00~15:00
自由時間
※ゴルフや野球観戦など、自分の趣味の時間として活用
16:00~17:00
出社し、出役する農家で午後の作業開始
※基本的な仕事内容は朝と同じ
17:00~18:00
エサやり
18:30~19:30
搾乳
19:00~20:00
ほ乳
20:00~21:00
たい肥の処理などを行い、1日の作業が終了
21:00~22:00
帰宅

“素人時代”も含めれば、酪農歴25年以上の大ベテラン!

幼い頃から慣れ親しんだ世界に“就職”

現在、酪農ヘルパーをやっている人は、社会人になってから初めて酪農に触れたというケースも多い。しかし、実家が酪農を営んでいたM.T.の場合は、酪農は幼い頃から常に自分の生活の身近なところにあったという。

「私が酪農ヘルパーになったのは21歳の時ですが――幼い頃から自分の家でやっていたエサやりや搾乳などを、そのまま他人の家でもやれば良かったので――酪農の仕事そのものに対する抵抗はまったくなかったですね」

また、彼の家は昔からJAの酪農部に所属していたので、他の農家の子供たちともレクリエーション活動などを通じて親交があった。

「そうした子供が成長して、今では一人前の酪農家になっている。現在、私が担当しているのは碓井安中、高崎、箕郷、吾妻、富岡地区の17戸の農家ですが、安中に関してはそのほとんどが昔からの“顔なじみ”なんです」

「苦痛」がなかったから、長く続けられた

ヘルパーになる前から酪農を知っていたとはいえ、仕事としていろいろな農家を回ることで勉強になることも多かったと彼は言う。

「ヘルパーとしてさまざまな経験を積んだことで、知識の引き出しが増えたのはうれしいですね。その甲斐あって、今ではほとんどのトラブルを自分自身の判断で解決できるほどの自信が身につきました。もちろん、問題が大きな場合は出役先の酪農家さんの判断を仰ぐことにしていますが」

ところで、2012年12月に勤続10年以上の酪農ヘルパーを表彰する会が東京で開催されている。その表彰式に参加したのは全国で12名だったが、その中のひとりに彼も入っていた。

「ヘルパーを長く続けられた理由をあまり深く考えたことはありませんが、やはり自分にとって仕事としてやっていることが苦痛ではなかった、という部分が大きいと思います。今後も大きなケガをせずにこの仕事を続けていけたら、万々歳かなと思っています(笑)」

わたしの一日

04:00~05:00
起床
※通勤時間は最も近い安中市内で5分、最も遠い吾妻地区で40分ほど。
05:00~06:00
出社し、出役する農家での作業開始
※その日の作業は牛舎の清掃から始まる
06:00~07:00
エサやり
06:30~07:30
搾乳
07:00~08:00
ほ乳
08:00~09:00
たい肥の処理など
09:00~10:00
帰宅
10:00~15:00
自由時間
※ゴルフや買い物などをして過ごす。ときには同じ仕事をする仲間と一緒に昼食をとることも
16:00~17:00
出社し、出役する農家での午後の作業開始
※基本的な仕事内容は朝と同じ
17:00~18:00
エサやり
18:30~19:30
搾乳
19:00~20:00
ほ乳
20:00~21:00
たい肥の処理などを行い、1日の作業が終了
21:00~22:00
帰宅
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