防ごう!賠償責任事故!

酪農ヘルパーが出役中に発生させてしまった賠償責任事故については、出役中の事故であるため、利用組合が組合員に対し損害賠償を行うこととなります。

この損害賠償については、利用組合が加入する「賠償責任保険」により、賠償金の支払いが可能な場合、この賠償責任保険から賠償金が支払われています。

酪農ヘルパー業務中に発生する賠償責任事故は、毎年10から15件ほど発生しており、毎年、同じような事象の事故の発生が繰り返されています。

賠償責任事故の発生は、組合員に対し損害のほか、利用組合や酪農ヘルパーに対する信用の失墜にもなることから、日ごろからの事故防止に対する意識を高めることが大切です。

酪農ヘルパー出役中の賠償責任事故発生状況

平成26年度の賠償責任事故の発生状況は次のとおりです。

# 事故月 事故内容 区分
1 2014年4月 バケットミルカーの操作ミスにより抗生物質投入牛の生乳がパイブラインに送乳されたため原乳を廃棄 原乳廃棄
2 2014年3月 フォークリフトで飼料運搬作業中、マスト下部をコンクリート床に接触し、フォークリフトの油圧を破損 器物破損
3 2014年5月 乳房炎治療中の牛を誤って搾乳し原乳廃棄 原乳廃棄
4 2014年7月 パイプライン洗浄作業を誤りバルク内原乳にパイプラインの洗浄液を混入 原乳廃棄
5 2014年10月 ホイルローダーで除糞作業中に牛床を破損 器物破損
6 2014年2月 乳房炎治療中の牛を誤って搾乳し原乳廃棄 原乳廃棄
7 2014年12月 ショベルカーで糞尿処理を実施中、近くのバキュームホースをショベルカーで踏み器物破損 器物破損
8 2014年12月 農家の指示により抗生物質を投与したが、誤って指示以外の乳頭に投与 農家が搾乳したところ原乳に抗生物質が混入し原乳廃棄 原乳廃棄

事故を発生させないために

①バルククーラーの電源の入れ忘れ

集乳後の搾乳の際、バルククーラーの電源を入れ忘れたことにより、乳温が高い状況が続き、バルク内の牛乳を腐敗させてしまう場合があります。

搾乳機器の洗浄などを行っている間は、コンプレッサーなどの騒音にかき消され、バルククーラーの作動を音で確認しづらい場合もあります。

<防止に向けて>

  • 搾乳前のバルククーラーの温度を確認・記録する習慣をつける
    バルククーラー内に牛乳がある・ないに関わらず、搾乳作業に入る前には必ずラルククーラー内の乳温を確認するようにします。
    また、酪農ヘルパー日報には「搾乳前」と「搾乳後」の乳温を書き込む欄がありますので、必ずこの欄を記入すれば未然に防止することができます。

②抗生物質の混入

乳房炎などの治療により、抗生物質を投薬された牛(当該牛)の乳が、他の牛乳に混入してしまうとバルククーラー内の牛乳すべてが出荷することができなくなります。また、当該牛を搾乳したことを気づかず、集乳作業が進むと、集乳車単位、ミルククーラー単位と廃棄される牛乳は増えることになります。

抗生物質の混入は、組合員が生産した牛乳が出荷できないだけでなく、廃棄乳は産業廃棄物として処理しなくてはならず、乳代の弁償や処理経費等膨大な費用が発生します。

<防止に向けて>

  • 組合員との事前の打ち合わせを徹底する
    酪農ヘルパー業務に出役する前に、出役の依頼のあった組合員と、当該牛の番号や位置などを事前の打ち合わせを行うようにします。傷病時等利用などで急きょ出役する場合などは、念のため該当牛が分かるようにマーキングをしてもらうよう組合員に協力を依頼します。
    また、搾乳作業中を集中して行えるよう、分娩介助などが重ならないか分娩予定なども確認しておきましょう。打ち合わせの際、酪農ヘルパー日報の連絡欄を活用しあらかじめ書面に残しておくことも有効です。
  • 当該牛の隔離をしてもらう
    季節によっては、搾乳時間に外が暗く、十分な明るさが確保できていない牛舎での搾乳作業では、当該牛のマーキングを見落としてしまう危険性もあります。もっとも確実な方法は当該牛をあらかじめ隔離してもらうことです。
    つなぎ牛舎などでスペースがなく隔離できない場合には、搾乳作業前に注意を喚起をする札などを搾乳作業に入る際に確実に見える場所にぶら下げてから搾乳作業を始めるなどの工夫をするのも効果的です。搾乳作業はルーチンワークのため、搾乳作業前に自らに注意喚起をしておくことが重要です。
  • 気づいたら早く対処する
    抗生物質の混入は、少しでも早い対応が被害を最小にします。誤ってミルカーを当該牛に装着してしまったことに気づいたら、速やかにパルセーターからミルカーを外す。搾乳を完了してしまったら、その時点で搾乳を中止し、利用組合職員へ連絡し対応を仰ぐなど、被害を広げない対応が必要となります。

③車両や作業機での作業中の事故

酪農ヘルパー業務は、組合員と利用組合との間の「請負業務」とされているため、酪農ヘルパー要員は、請負業務契約に基づき、利用組合からの指揮命令により出役活動をしています。

このことから、組合員の直接指示や請負業務契約以外業務を酪農ヘルパーに行わせ事故が発生すると、賠償責任保険の対象外となり、業務上の負傷や死亡した際の労災補償保険の対応外となるだけでなく、状況によっては、利用組合が労働安全衛生法違反による刑事責任や、労働契約法による安全配慮義務違反を問われる場合があります。

<防止に向けて>

  • 請負業務契約(規約)の再確認
    総会等で都度、酪農ヘルパー要員が行う業務内容について、請負業務契約(規約)を再確認しましょう。請負業務であることを認識し、万が一のことを考え、契約内容以外の業務は「しない」「させない」ことが重要です。
  • 車両や作業機の作業が必要であれば補償を担保できる取り組みを
    請負業務契約の見直しや変更を行い、車両や作業機での業務を酪農ヘルパーが出役中に作業できるよう請負業務に定義にしましょう。
    また、車両による事故は賠償責任保険では対応できないので、万が一の事故に対応するために、組合員は自動車保険等に加入するほか、フォークリフトやフロントローダーなど作業機を業務で使用させる場合、利用組合は、労働安全衛生法による車両系建設機械の運転技能講習や特別教育(大きさにより異なる)を酪農ヘルパー要員に受講させなければなりません。
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